COLUMN 【サイクリングスポット】江戸散走 海苔のふるさと -東京都大田区-
江戸の胃袋を満たす一大漁場
東京都大田区
羽田空港と京浜工業地帯で構成される一帯は、かつて江戸市民の胃袋を満たす肴を供給する一大漁場であった。
江戸前として表現される東京湾の豊かな海の幸。
中でも、海苔に関しては国内でもトップの生産量を誇る産地であった。
昭和の半ばに幕を閉じた海苔の養殖。
今は面影が薄っすらと感じられる沿岸地域を巡り、江戸の賑わいを想像してみよう。
穴守稲荷神社
蒲田から羽田空港へと向かう道中に京浜地域の稲荷信仰の拠点である穴守稲荷神社がある。ここは江戸時代、干拓により開かれた土地に、五穀豊穣、海上安全を祈願して稲荷神が祀られた。
江戸から始まった穴守稲荷の歴史は、近代になると蒲田での映画産業の賑わいから芸能人が参拝に訪れ、羽田空港に隣接するという場所柄、航空安全の神社としても多くの参拝客が訪れている。
境内には自転車用のスタンドもあり、多摩川サイクリングロードを利用してロードバイクで気軽に訪れる事ができる神社だ。
江戸時代、暴風雨や津波により堤防に開いた穴のため開墾した田畑に被害が出るところを祠に祀られた稲荷大神が田畑を守ったという事から名づけられた穴守稲荷神社。
並ぶ鳥居をくぐり、祠に向かうと様々なお稲荷さんが鎮座している。
かつては4万を超える鳥居が奉納されたという穴守稲荷神社だが、終戦時、連合国軍により羽田に残る大鳥居を以外は全て取り壊された。
戦時中の空襲被害や、戦後混乱期の破壊など、現在の姿からは想像できない深く悲しい歴史がある。
2020年に作られた高さ11mの稲荷山に登ると、街並みを見渡す事ができ、あらためて戦後の復興の姿を見る事ができる。
決して大きくは無い境内だが、その濃い内容に圧倒されるだろう。
大田市場
穴守稲荷神社から東京湾をかすめ、入江に浮かぶ船を眺めながら進む。江戸時代に干拓された土地は今では様々な企業や住宅が並ぶとともに所々に公園が整備され、生活の場となっている。
朝は職場に自転車で向かう大勢の人たちの姿が、埋立地を繋ぐ橋の上に見える。公共交通機関もあるものの、この土地では自転車が非常に便利に使える交通手段という事だ。
いくつかの橋を渡り、東京港野鳥公園を抜けて大田市場へ着いた。早朝の業務を終えて一息ついた時間帯は陳列されている商品の数は少ないものの市場の雰囲気は味わえる。
ここ大田市場は花き、青果の取り扱いは日本一を誇る東京都中央卸売市場でも豊洲市場に次いで中心的な市場。平成元年に開設されたというから既に40年近くの歴史がある。
市場内には食堂も多くあり、市場ならではのグルメを存分に味わえるからサイクリングでお腹が減ったら海鮮グルメなどを食べていこう。
大田市場から大森 海苔のふるさと館へと向かう道。東京観光の黄色い観光バス本社がある。
大森 海苔のふるさと館
平安末期から漁村として栄えた沿岸部は、江戸時代から昭和38年まで海苔の養殖が盛んに行われていた。
日本国内でも有数の海苔生産地は、周辺の開発によって幕を閉じ今では海苔屋が数件営業して当時の面影を残している。
大森 海苔のふるさと館は、海苔養殖の歴史を伝える海苔養殖の博物館。
養殖や生産に関わる道具や風景に触れれば、日本の食卓には欠かせない海苔を別の観点から味わうことができる。
明治の海苔養殖の様子を描いた浮世絵 「大日本物産図会 武蔵国浅草海苔製図」明治十年 歌川広重(三代)。大森 海苔のふるさと館 提供
海苔のふるさと館を出て、海を眺めれば時の流れが目に浮かんでくる。
江戸を巡るなら自転車で
江戸の栄華、光と影、一見すると住宅地の街並みの中に隠れている数々のスポット。
自転車で巡れば、視点も変わって様々な歴史が見えてくる。
- 京急蒲田駅-穴守稲荷-大田市場-東京港野鳥公園-大森 海苔のふるさと館-京急蒲田駅
- 距離:約16km
- 消費カロリー:約700kcal
- シェアサイクル:京急蒲田駅、蒲田駅周辺にハローサイクリングのステーションがあります
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周辺サイクルベースあさひ
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