COLUMN 自転車事故防止 未然に防ぐ自転車事故 -秋の全国交通安全運動-
自転車乗用中と歩行中の事故死者数は横ばい
内閣府の資料によると近年、交通事故死者数は全体的には減少傾向ではあるものの、自転車乗用中と歩行中の交通事故死者数はほぼ横ばいで減少傾向とはいえない状態となっています。
自動車乗車中 | 自動二輪車乗車中 | 原付乗車中 | 自転車乗用中 | 歩行中 | |
平成22年 | 1.28 | 0.41 | 0.28 | 0.52 | 1.37 |
平成23年 | 1.15 | 0.4 | 0.27 | 0.5 | 1.33 |
平成24年 | 1.12 | 0.36 | 0.26 | 0.44 | 1.28 |
平成25年 | 1.11 | 0.37 | 0.23 | 0.47 | 1.25 |
平成26年 | 1.08 | 0.35 | 0.2 | 0.42 | 1.18 |
平成27年 | 1.04 | 0.35 | 0.18 | 0.45 | 1.21 |
平成28年 | 1.05 | 0.36 | 0.18 | 0.4 | 1.07 |
平成29年 | 0.96 | 0.35 | 0.14 | 0.38 | 1.06 |
平成30年 | 0.94 | 0.32 | 0.17 | 0.36 | 0.99 |
令和元年 | 0.86 | 0.29 | 0.12 | 0.34 | 0.93 |
令和2年 | 0.7 | 0.31 | 0.11 | 0.33 | 0.79 |
注1 警察庁資料による。ただし,「その他」は省略。
注2 算出に用いた人口は,該当年の前年の人口で,総務省統計資料「人口推計」(各年10月1日現在人口(補間補正を行っていないもの。ただし,国勢調査実施年は国勢調査人口による。))による。
自転車の事故
自転車乗用中の死者・重傷者数(第1・第2当事者)のうち,自転車対自動車の事故によるものは約8割(令和2年79.4%)を占め、自転車対自動車の事故を事故類型別にみると,出会い頭衝突が55%(令和2年)を占めています。
自転車対自動車の出会い頭事故について,自転車側の法令違反の状況をみると,78%(令和2年)が安全不確認等の法令違反を犯している事が分かります。
相手当事者別自転車乗用中死者・重傷者数(第1・第2当事者)の推移
対自動車 | 自転車相互 | 自転車単独 | その他 | |
平成22年 | 9,354 | 459 | 1,139 | 898 |
平成23年 | 8,939 | 488 | 1,041 | 853 |
平成24年 | 8,540 | 436 | 974 | 796 |
平成25年 | 8,043 | 396 | 845 | 720 |
平成26年 | 7,771 | 419 | 852 | 709 |
平成27年 | 7,295 | 357 | 711 | 632 |
平成28年 | 6,873 | 355 | 666 | 607 |
平成29年 | 6,974 | 399 | 628 | 641 |
平成30年 | 6,596 | 447 | 553 | 539 |
令和元年 | 6,329 | 418 | 585 | 499 |
令和2年 | 5,425 | 392 | 560 | 452 |
注 自転車が第1当事者又は第2当事者で死亡・重傷となった人数を計上。
自転車対自動車事故における事故類型別自転車の死者・重傷者数(令和2年)
令和2年 | 構成率 | |
出合い頭衝突 | 2,966 | 55% |
右左折時衝突 | 1,505 | 28% |
追越追抜時衝突 | 190 | 4% |
追突 | 197 | 4% |
その他 | 567 | 10% |
交差点内の事故 | 2,482 | 46% |
計 | 5,425 |
自転車対自動車の出会い頭事故における法令違反別自転車の死者・重傷者数(令和2年)
〈自動車の法令違反〉 | 〈自転車の法令違反〉 | |||||
令和2年 | 構成率 | 令和2年 | 構成率 | |||
安全不確認 | 1,065 | 36% | 安全不確認 | 667 | 22% | |
前方不注意 | 200 | 7% | 動静不注視 | 190 | 6% | |
その他の安全運転義務違反 | 149 | 5% | その他の安全運転義務違反 | 44 | 1% | |
信号無視 | 138 | 5% | 信号無視 | 215 | 7% | |
一時不停止 | 191 | 6% | 一時不停止 | 468 | 16% | |
交差点安全進行義務違反 | 786 | 27% | 交差点安全進行義務違反 | 479 | 16% | |
徐行場所違反 | 258 | 9% | 優先通行妨害等 | 77 | 3% | |
その他 | 179 | 6% | その他 | 174 | 6% | |
違反なし | 652 | 22% | ||||
計 | 2,966 | 計 | 2,966 |
注 警察庁資料による。
自転車(第1当事者)の年齢層別交通死亡事故件数割合
年齢層別に自転車及び電動アシスト自転車による交通死亡事故(第1当事者)を件数割合でみると,65歳以上の割合は,電動アシストでない自転車については, 平成23年から平成27年の合計では59.2%,平成28年から令和2年の合計では67.9%と増加傾向にあり,電動アシスト自転車については平成23年から平成27年の合計では84.3%,平成28年から令和2年の合計では83.0%でいずれも8割以上と高い割合を占めています。
65歳未満 | 65~69歳 | 70~74歳 | 75~79歳 | 80~84歳 | 85歳以上 | ||
自転車 | 平成23年~27年計 | 40.8% | 9.3% | 11.8% | 15.2% | 13.7% | 9.2% |
平成28年~令和2年計 | 32.1% | 12.3% | 13.4% | 14.9% | 16% | 11.3% | |
電動アシスト自転車 | 平成23年~27年計 | 15.7% | 6.7% | 15.7% | 18% | 21.3% | 22.5% |
平成28年~令和2年計 | 17% | 8.1% | 7.4% | 17.8% | 20% | 29.6% |
注 警察庁資料による。
ヘルメット非着用の自転車乗用中死者・負傷者の損傷主部位別比較(令和2年)
ヘルメットを着用していないで事故にあった際の自転車乗用中死者の損傷主部位別の割合をみてみると,実に半数以上(56%)が頭部損傷によるもので,負傷者の損傷主部位別の割合と比較すると,頭部損傷の割合が顕著であることが明らかとなっています。このことからも頭部を保護するヘルメットがいかに重要かが分かります。
死者 | 負傷者 | |||||
令和2年 | 構成率 | 令和2年 | 構成率 | |||
頭部 | 226 | 56% | 頭部 | 6,767 | 12% | |
頸部 | 26 | 6% | 頸部 | 6,561 | 11% | |
胸部 | 47 | 12% | 胸部 | 3,049 | 5% | |
腰部 | 14 | 3% | 腰部 | 5,554 | 9% | |
腕部 | 0 | 0% | 腕部 | 12,346 | 21% | |
脚部 | 4 | 1% | 脚部 | 20,709 | 35% | |
窒息・溺死等 | 51 | 13% | 窒息・溺死等 | 2 | 0% | |
その他 | 36 | 9% | その他 | 3,824 | 7% | |
計 | 404 | 計 | 58,812 |
ヘルメット着用状況別の致死率比較(令和2年)
また、ヘルメット着用状況別の致死率を比較しても着用した場合に比べ非着用は致死率が約3倍となっています。
着用 | 0.23 |
非着用 | 0.68 |
注 「致死率」とは,死傷者のうち死者の占める割合をいう。
自転車事故の死傷者におけるヘルメット非着用者率の推移
死傷者におけるヘルメットの非着用者率の推移を年代別でみてみると,中学生,小学生の比率が減少傾向であるのに対し,高校生以上の年代は,微減,かつ,高い水準のままです。
道路交通法(昭35法105)第63条の11において,「児童又は幼児を保護する責任のある者は,児童又は幼児を自転車に乗車させるときは,当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。」とされていること,また,中学校では,自転車による登下校時のヘルメット着用が校則等で定められていることなどにより,小・中学生の非着用率の低下に結び付いているものと考えられ,自転車乗用中の死者数も低く抑えられています。
全体 | 65歳以上 | 高校生 | 中学生 | 小学生 | |
平成22年 | 91.8% | 96.3% | 95.5% | 72.7% | 82.6% |
平成23年 | 91.6% | 96.1% | 95.8% | 71.3% | 82% |
平成24年 | 91.3% | 96.1% | 95.8% | 70.4% | 80.3% |
平成25年 | 91.2% | 96.3% | 95.5% | 69.5% | 79.5% |
平成26年 | 90.8% | 96.2% | 95.3% | 66.8% | 77.6% |
平成27年 | 90.6% | 96.7% | 94.9% | 66% | 76.4% |
平成28年 | 90.2% | 96.5% | 94.7% | 63.3% | 75.6% |
平成29年 | 90.1% | 96.3% | 94.9% | 62.2% | 75.7% |
平成30年 | 90% | 96% | 94.6% | 62.5% | 73% |
令和元年 | 89.8% | 95.7% | 94% | 60.6% | 73.6% |
令和2年 | 89.5% | 95.6% | 93.9% | 59.8% | 74.1% |
注 「ヘルメット非着用者率(死傷者)」とは,自転車乗用中の死傷者のうち,ヘルメット非着用者の割合をいう。
安全確認、法令遵守、ヘルメットの着用
統計資料からも事故に遭わないようにするためには、自転車に乗車している際の法令遵守と安全の確認が大切で、ヘルメット着用が事故に遭った際の致命傷となる頭部を守るという事が分かります。
自転車に乗る際の交通ルール、自転車安全利用五則を守る事で事故に遭う事も少なくなります。
自転車安全利用五則
1.車道が原則、左側を通行 歩道は例外、歩行者を優先
自転車は、車道が原則
道路交通法上、自転車は軽車両と位置付けられています。したがって車道と歩道の区別があるところは車道通行が原則です。
*罰則:3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
車道は左側を通行
自転車が車道を通行するときは、自動車と同じ左側通行です。道路の中央から左側部分の左端に寄って通行してください。
一方通行道路で「自転車を除く」の補助標識があり、自転車の規制が除外となっている場合に通行(逆行)する場合も同じです。
*罰則:3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
歩道は例外
普通自転車が歩道を通行することができる場合
➡ 歩道に「普通自転車歩道通行可」の標識等があるとき。
➡ 13歳未満の子どもや70歳以上の高齢者、身体の不自由な人が自転車を運転しているとき。
➡ 道路工事や連続した駐車車両などのために車道の左側部分を通行するのが困難な場所を通行する場合や、
著しく自動車の通行量が多く、かつ、車道の幅が狭いなどのために、追越しをしようとする自動車などの接触事故の危険性がある場合など、
普通自転車の通行の安全を確保するためにやむを得ないと認められるとき。
自転車道があるところでは、道路工事などやむを得ない場合を除き、自転車道を通行しなければなりません。
*罰則:2万円以下の罰金又は科料
路側帯を通行できる場合
自転車は、歩行者の通行に大きな妨げとなる場合や白の二本線の標示(歩行者専用路側帯)のある部分を除き、路側帯を通ることができます。
ただし、左側部分に設けられた路側帯を通行してください。
その場合は、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で通行しなければなりません。
平成25年6月14日公布、12月1日に施行の「改正道路交通法」により、「自転車等軽車両が通行できる路側帯は道路の左側部分に設けられた路側帯」に限定されました。
*罰則:3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
歩道は歩行者優先
自転車が歩道を通行する場合は、車道寄りの部分を徐行しなければなりません。歩行者の通行を妨げるような場合は一時停止しなければなりません。
*罰則:2万円以下の罰金又は科料
自転車が歩道を通行する場合は、車道寄りの部分を徐行しなければなりませんが、歩道では自転車同士による相互通行することが可能です。
その際、歩行者の動向に注意することはもちろん、すれ違う自転車に危険を感じる場合は、自転車を降りて、自転車を押して歩きましょう。
2.交差点では信号と一時停止を守って、安全確認
信号は必ず守る
自転車は、道路を通行する際は、信号機等に従わなければいけません。
特に、横断歩道を進行して道路を横断する場合や、歩行者用信号機に「歩行者・自転車専用」の標示のある場合は、歩行者用信号機に従わなければなりません。
歩行者用信号機の青色信号の点滅の意味は、黄色信号と同じです。
次の青色信号になるまで待ちましょう。
*罰則:3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金等
交差点では一時停止と安全確認
一時停止標識のある場所、踏切などでは、必ず止まって左右の安全を確認しましょう。
*罰則:3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
3.夜間はライトを点灯
夜間は必ずライトを点灯する
無灯火は、他から自転車が見えにくくなるので非常に危険です。安全のため、夜間はライトを点灯し、反射器材を備えた自転車を運転しましょう。
*罰則:5万円以下の罰金
4.飲酒運転は禁止
飲酒運転は禁止
お酒を飲んで運転することは、非常に危険です。自動車の場合と同じく酒気を帯びて自転車を運転してはいけません。
また、酒気を帯びている者に自転車を提供したり、飲酒運転を行うおそれがある者に酒類を提供したりしてはいけません。
*罰則:5年以下の懲役又は100万円以下の罰金(酒に酔った状態で運転した場合)
5.ヘルメットを着用
ヘルメットを着用
自転車を運転する場合は、事故による被害を軽減させるため、乗車用ヘルメットをかぶりましょう。
児童や幼児の保護者は、児童等が自転車を運転するときや児童等を自転車に乗車させるときは、児童等に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければなりません。
成長過程の子どもは体の重心位置も不安定で、転倒した時、頭部に重大なダメージを受けることがあります。
児童等が自転車に乗るときはもちろん、幼児を幼児用シートに乗せるときも、幼児用ヘルメットを着用しましょう。
令和5年4月1日から、自転車を運転する場合は、年齢に関係なくすべての利用者が乗車用ヘルメットをかぶるように努めなければならなくなりました。
頭部を守るためにも自転車乗車用ヘルメットをかぶって自転車に乗りましょう。
自転車のメンテナンスと身体のメンテナンス
走る、曲がる、止まるといった基本の動作がきちんとできるよう普段から自転車のメンテナンスを行う事も事故防止に役立ちます。
また、ライトや反射器材といった薄暗い時間帯や夜間の安全確保に役立つ装備も、点灯などの動作・機能確認を行っておきましょう。
タイヤに空気がきちんと入っているか?やブレーキがきちんと効くか?など、乗車時やメンテンス時に気づく点があった際は点検、修理を行う事が大切です。
乗車前確認
- ブレーキは前輪及び後輪にかかり、時速10キロメートルのとき、3メートル以内の距離で停止させることができること。
- 前照灯は、白色又は淡黄色で、夜間前方10メートルの距離にある交通上の障害物を確認することができる光度を有するもの。
- 反射器材は、夜間、後方100メートルの距離から自動車の前照灯で照らして、その反射光を容易に確認できるもの。
自転車の他、乗車する人自身のメンテナンスや準備運動も大切です。
ストレッチなどの準備運動で身体をほぐしておく事で、乗車中の操作やペダルを漕ぐ際にも身体の動きが良くなり事故防止に繋がります。
事故に遭わないためには? 未然に防ぐ自転車事故 まとめ
- 交通ルールを守る
- ヘルメットを被る
- 自転車、身体のメンテナンス
自動車の事故同様、自転車の事故もまた交通ルールを守らない事によって起こる事故が多くなっています。安全に自転車に乗るためには自転車安全利用安全五則を守りましょう。
万が一の事故の際、死亡原因の代表となるのが頭部の損傷です。ヘルメットを被り、万が一の事故や転倒の際に頭部を保護しましょう。
定期的なメンテナンスを行う事で、自転車の確実な動作に繋がります。また、身体をほぐしておく事で、自分自身の動きも良くなった状態で乗車する事に繋がります。
自転車は自分でペダルを漕ぎ、自分でハンドルを操作し、身体を使って走る乗り物です。
安全・安心な自転車ライフをお楽しみください。